アラスカを追いかけて
ジョン・グリーン著 白水社 ISBN:4560027595; (2006/11)
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思春期に特有の憂鬱や倦怠、不安定なアイデンティティといったものを持て余し、無力でありながら同時に多感でもあるがゆえに、日常が事件に結びつく。剥き出しなまでにピュアだったそんな時代を、ぼくたちも忘れてはいないはずです。
                      jd
   

Copyright (c) John Green 2005


【登場人物紹介】
マイルズ・ホールター: フィクション、ノンフィクションを問わず、著名人が「最後に遺した言葉」が大好き。小説や詩を読んだことはなくても、その最後の言葉は知っている。カルバー・クリークに転校した際、あまりに華奢な体躯のために、皮肉で「パッジ」(=ずんぐりした)というあだ名をつけられる。

チップ・マーティン: 大掛かりないたずらを考え出し、その指揮を執ることから「カーネル」(=大佐)と呼ばれている。頭はいいのだが、態度もカーネル級。

アラスカ・ヤング: 本が好きで部屋中本だらけだが、今のところはタバコやらセックスやらいたずらやら、本を読む以外にやらないといけないことが多すぎて、読書の時間を取れないのが悩み。

ララ: ルーマニア人。マイルズに想いを寄せる。

タクミ: ラップが得意な日本人。

スターンズ先生: カルバー・クリークの学生部長。校則にうるさく、カーネルやアラスカは疎ましく思っているが、実は思いやりのある先生。アラスカたちはいたずらを決行する際のコードネームとして、「イーグル」と呼んでいる。
【Story】
マイルズ"パッジ"ホールターはフロリダのパブリックスクールに通っていたが、作家のフランソワ・ラブレーが息を引き取る前に言ったと本で読んだ「わたしは偉大なるもしかしてを探しに行くのだ」という言葉に感銘を受け、(自分は別に死ぬわけじゃないけれど、)退屈な毎日と決別し、自分にとっての「偉大なるもしかして」を探すべく、アラバマの寄宿学校「カルバー・クリーク」への転校を決意する。そこはかつて、マイルズの父が秀才でありながら腕白坊主として名を馳せた学校でもあった(そして体育の授業がないというのも決め手の一つだった)。
 パブリックスクール時代は友達もできず、フェアウェル・パーティーにも二人しか参加してくれなかったぐらいだが、カルバー・クリークではずけずけとものを言う生徒ばかりで、おかげで初日からさっそっく友達ができるのだが、初めのうちはそのギャップに戸惑いを隠せない。カルバー・クリークには大きく分けて、週末には実家に帰る金持ちの生徒(ウィークデー・ウォリアーズ)と、感謝祭とクリスマスの休暇以外はずっと寮で暮らす生徒の二つのグループが存在していた。対立するグループは互いにいたずらを仕掛けあい、なんとか相手より優位に立とうと争っていた。マイルズはルームメイトのチップ"ザ・カーネル"マーティンや、その友達のアラスカ・ヤングと同じく後者に属し、本来は真面目な性格のマイルズはいたずらや校則破りに終始するカーネルたちのペースになかなか馴染めないのだが、次第にその嵐のような勢いに巻き込まれ、いつの間にかタバコも吸えばビールも飲むようになり、ずけずけとしゃべる仲間たちからびしびしと伝わる何か、「偉大なるもしかして」につながるかもしれない何かを感じていた。そんな中、これまでに出会った女の子の中でも飛びぬけて可愛いアラスカの時おり見せる無邪気な笑顔や仕草に魅かれていく。アラスカは自分のことや家族のことを話したがらなかったり、ガルシア・マルケスの作品の中から「一体どうやってこのラビリンスから抜け出せばいい?」と意味深な一節を折に触れて引用したり、思いがけず冷たくしたり優しくしたり、気分屋でミステリアスな一面を持っていた。アラスカは、ラビリンスに迷い込んで身動きが取れなくなって、いつかそこから抜け出してやるんだと言いながら一生を終えるようなマネだけはしたくないと言って憚らなかった。それは、アラスカにしてみれば未来を口実に現実から逃げているだけでしかなかったのだ。
 マイルズたちはララやタクミと一緒になって、ウィークデー・ウォリアーズたちのシャンプーに業務用の塗料を混ぜたり、嘘の成績レポートを家に送りつけたり、夜中に先生の家の前でクラッカーを鳴らしたり、休む暇もなくいたずらを繰り返すのだが、いたずらに対するアラスカの意識は明らかに他のみんなと違っていた。ただの仕返しではなく、退屈な日常に刺激を求めてのものというわけでもなかった。マイルズたちはそれぞれに事情を抱えながら、たむろしてはタクミの得意とするラップを競ったり、タバコや酒を分け合ったり、分からない授業を教えあったりしながら絆を深めていく。
 ある日、いたずらをやらかした後に裏山の廃屋にみんなで隠れていると、退屈しのぎに「最高の日/最悪の日」ゲームをしようとアラスカが言い出す。これまでに一番良かったと思える一日、最悪だった一日のエピソードを話し合い、その優劣でビールを飲む権利を争おうというのだ。酔った勢いもあって、このゲームの中でみんなの過去や家庭の事情、心境が次第に明らかになっていく。マイルズにとって最高の一日は、今日だと言う。仲間に囲まれて、童心に返って遊び呆け、まずい食事と共にして、まさに求めていた「偉大なるもしかして」なのかもしれないと言う。アラスカは、八歳の時に母親と一緒に動物園に行った日。カーネルは、トレーラーハウスに暮らす母親に大きな家を買ってあげる日が最高の一日となるはずだからまだだと言う。そしてアラスカにとって最悪だった一日は……、

 と、ストーリーはこれぐらいにしておきます。愛嬌があって可愛くて、だけど時おり見せる物思いに沈んだような表情も気になるアラスカは、マイルズやカーネルを残し、一人旅立ってしまいます。後半のパッジたちの奮闘ぶりにも注目です。お楽しみに!



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