明日に向って撃て!

  "You know, when I was a kid, I always thought
                              I was gonna grow up to be a hero."

1969年 米
監督:G.R.ヒル
脚本:W.ゴールドマン
音楽:B.バカラック
出演:P.ニューマン、R.レッドフォード、
    K.ロス
Butch Cassidy and The Sundance Kid


1890年代のアメリカ西部を生きた二人のアウトローの半生を追った本作は、「ほぼ」実話だという。映写機がカラカラと回り始めると、鉄道を襲った「壁の穴強盗団」が馬を駆って疾風のように去っていくシーンが、セピア色に編集されたフィルムとして再現される。強盗団の中で一際目を引くのが、頭が切れて人望も厚く、全ての計画を任されているブッチ・キャシディ(P.ニューマン)と、早撃ちガンマンのサンダンス・キッド(R.レッドフォード)の二人だ。生き抜くためには自ら道化役も買って出るブッチといつもクールなキッドのコンビが、西部の荒野を舞台に、流れる雲のように自由に生きている。
 二人の自由度はかなり高く、キッドがK.ロス扮する女教師のエッタの家で一晩を過ごし朝を迎えていると、前の晩に初めて目にした未来の乗り物=自転車を早速購入したブッチが鼻唄を歌いながらやってくる。B.バカラックの軽快な音楽に合わせてリンゴ畑の中を軽やかに走る有名なシーンだ。真面目で現実的なエッタも、恋人であるキッドの前でブッチからプロポーズされてOKしてみたり、二人に翻弄されるようになかなかとらえどころのない魅力的な役柄となっている。おかしな三角関係だ。
 ヒリヒリとするような刺激的な日々を送りながらも、浴びるように酒を飲んだり、女を抱いたり、状況に比して緊迫感の感じられない二人だったが、ある事件をきっかけに強力な追跡団にしつこく追われるハメになる。この列車強盗の際にも二人の魅力が存分に発揮されていて、たとえばいつもより頑丈そうな金庫に対していつもより火薬の量を増やし(すぎ)て車両ごと木っ端微塵にしてしまい、飛び散る紙幣を呆然と眺めているなど、なんともドジな一面を持っている。カッコいいのは当たり前で、その隙間にどれだけドジなシーンを効果的に組み込めるか、ということがこの作品における挑戦の部分のような気がする。
 必死で逃げる二人だが、追跡団は二人も恐れる凄腕ばかりで構成されていた。常に周囲に目を見張るキッドに対し、ブッチは水溜りで水浴びをしたり、宿ではすぐに女を部屋に呼んだり、二人はどこまでも対照的だ。性格的には受け容れあえない二人の方が、コンビとしてはうまく機能するということだろうか? 本題に戻り、切り立つ岩山の頂まで追い詰められた二人がまんまと逃げおおせるシーンも、この映画におけるハイライトの一つだ。いつもクールだったキッドが初めてみせたおちゃめな一面。それを鼻で笑いながらも後ろからそっと背中を押すようなブッチの優しさ。実に仲のいい二人だ。
 自分たちがどれだけ優秀な追跡団に追われていたかを知った二人は、エッタを連れてボリビアに行くことを決意する。「銀行でも襲って地味に暮らす」つもりらしい。それまでのワイルドなカウボーイスタイルから粋な紳士風にめかしこんだ二人も、やはりカッコいい。そこに行けば金や銀がザクザク埋まっていて、人々が我先にと押し寄せてくる夢の楽園……のはず、だった……。銀行の下見に行き、行員にスペイン語で声をかけられ、あたふたする二人の様子が面白い。帰ってエッタにスペイン語を教えてもらい、必死に勉強する姿も面白い。メモを片手に銀行に引き返す様子も面白い。何せ面白い。痛快だ。
 カフェで流れていそうなポップなミュージックに乗って次々と銀行を襲い、軽快な逃走劇を繰り返し、徐々にテンポがアップしていき、その間、映像に映る保安官の数がどんどん膨れ上がり、一方では余裕でレストランに入って優雅にワインなどを飲む三人の様子が映し出され、すでに引き返せないところまで来ていることを暗示する。そして、流れ着いた町で百人単位の保安官、騎兵隊に包囲される。
 繋いだ馬まで走って銃弾を取りに戻るブッチ、二丁拳銃で援護射撃するキッド。ちゃんと援護しろと文句を言うブッチ、ちゃんと走れ、あれじゃ散歩だと応戦するキッド。どこまでもユーモアを忘れない。そして、ブッチが久しぶりに思いついた名案は、オーストラリアだという――そこではみんなが英語を話している。ボリビアに来て学んだ教訓を生かそうというのだ。二人は夢に向かって、銃を手に包囲網に突入する……。
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