The Little Prince

  「大人もみんな、かつては子供だったんだ」

Antoine de Saint-Exupery 著
Katherine Woods 訳
A Harvest Book
ISBN: 0156528207
The Little Prince


読み始めてしばらくの間は、どうしてここまで大人と子供の構図を分かりやすくしたのだろうかと少し釈然としないものもあった――大人は物分りがよくない、子供がイチイチ説明してやらないといけない、大人は服装がきちんとしていない人の言うことに耳をかさない、数字で示されると何でも分かった気になる、忙しい忙しいと言って威張ってばかりいる、大人は、大人なんていうものは……。でもそれは、大人になってしまった人たちを鼓舞したい気持ち、そして子供たちへの尽きせぬ期待の表れなんだと思う。かつては豊かだったはずの想像力、発想力、展開力、視点の柔軟性、といったものを自分で気づかないうちに失ってゆく寂しさ。王子さまが自分の星では活火山にかざして朝食を温めたり、七日に一度のすす払いを欠かさなかったり、座っているイスをほんの少しずつ動かして日の入りを一日に四十四回も見たりするエピソードは、作者がぼくたちに提示して見せた想像力以外の何ものでもない。
 釈然としなかったしこりのようなものが氷解していったのは、「足し算なんかよりも、花が何百年も前から何の役にも立たないトゲを作り続けているわけを知ろうとすることの方が大切なんじゃないか」と言って王子さまが泣き出すシーンだった。何を大切に思うかということは、その人の人柄を表していると言える(思うだけじゃなくって、本当に態度や行動で示してもらわないといけないんだけど)。王子さまは渡り鳥がほかの星に移り住むのを見て自分も旅をすることにしたわけだが、旅の途中、ことごとく住人が一人きりの色んな星に立ち寄っている。たとえば感心されたがってばかりの「うぬぼれ屋」が住む星だったり、星を全部自分のものにしようとする「実業家」の住む星だったり、自分は一歩も動かずに探険家の報告をノートにメモするだけの「地理学者」の星など。だけどそんな大人たちの話を聞いて王子さまが感じるのは、「忙しそうだな、だけど大切なことじゃない」ということだった。そんな王子さまにしてみれば、一分間に一巡りするようになってしまった星で三十秒ごとに街灯を点けたり消したりしている「点灯夫」だけが、友達になりたいと思える大人だった(でもぼくは、「夕陽でさえわしの思うがままだ、でも夕陽にも都合があるだろうから、夕陽の都合が良くなるまで待とう、そうすればおそらく夕方の7時40分ごろにはわしの命令どおり夕陽は沈むだろう」と得意げに話す「王さま」もオススメです!)。
 そして七番目にやってきたのが地球で、ここで「ぼく」と出会う。王子さまは長い旅の果てに、探しているものはたった一輪のバラの中にもあるし、一滴の水の中にだってあるということを知る。それは、かけがえのない存在である友達のおかげなんだという。大切な友達が夜空にきらめく無数の星々のどこかで笑っていると思えば、自分も笑顔になれる。夜空を眺めるのが好きになる。哀しみや孤独を知るからこそ、本当に人を愛することができるんだ。きっとそれは、ステキなことだ。想像してみることで、どれだけ世の中が変わるか。ジョン・レノンが時代に遺したメッセージにつながるものがある――想像してごらん、全ての人が世界を分かち合っていると。ぼくのことを夢想家だと言うかもしれない。でもぼくだけじゃないはずさ――。想像力とは、相手の気持ちになることであり、相手の立場に立った上で自分の気持ちをうまく伝えることだと思う。みんながちょっとずつ隣りの人の気持ちを想像することができれば、もっとずっといい社会になると思う。だからぼくは、そんな気持ちを思い出させてくれるこの本が大好きです。


 ぼくが読んだのはKatherine Woodsが翻訳(仏→英)したものですが、色んな書評などを見てみると、Richard Howardの翻訳はさらに評判がいいようです。
 もちろん日本語の翻訳もあります。
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